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2016年10月26日水曜日

【今日の1曲】No.4 - 映画『マトリックス』より「メイン・タイトル -- トリニティ・インフィニティ」

本日は、20世紀の終わりに登場した、最高に「リアル」なサイバーパンクSFアクション映画『マトリックス』シリーズからのご紹介です!

〈基本データ〉
タイトル:メイン・タイトル -- トリニティ・インフィニティ/Main Title - Trinity Infinity
出典:『マトリックス』
作曲者:ドン・デイヴィス
演奏オーケストラ:不明

作曲者のドン・デイヴィスは、前回の記事で触れた通り、『ジュラシック・パークIII』も手がけています。『ジュラシック・パークIII』では、ジョン・ウィリアムズのテーマを引き継ぎ、比較的「伝統的」な映画音楽を作っていましたが(試しにYoutube等で "Plane Ride/Alan's Nightmare" を検索してみてください)、『マトリックス』でのデイヴィスの音楽は一味違います。

『マトリックス』でのデイヴィスの作風の特徴は、金管楽器の鋭い和音、金属的な打撃音、採譜するのが極めて困難な各楽器のバラバラの動きです。仮想世界の中で主人公と「エージェント」たちが、超人的な動きを以って戦うこの映画に、これ以上に合う音楽は考えられません。我々が現実だと考えている世界が、実はコンピュータに作り出された「マトリックス」と呼ばれる幻影に過ぎず、実際の世界ではコンピュータが人間を支配し、電力供給源としているという設定のこの物語では、「マトリックス」と、機械との戦いの真っ最中の「現実世界」の対比がはっきりとなされています。コンピュータとの戦いを描いた作品で、あえて電子音ではなくフルオーケストラをつかうあたりが面白いですね。この曲でも、2:21あたりでは金管楽器が緊迫感を高め、若干ジョン・ウィリアムズを思わせますが、その直後にピアノのシャープな細かい打撃が入り、やや近未来的な音作りがなされているのがわかります。

さて、三部作を通じて使用されるモチーフが以下のものです。

至極単純なように見えますが、注意して聴いていると、これが繰り返し出てくることに気がつくことでしょう。

※※※ネタバレ注意※※※
ちなみにタイトルの「トリニティ・インフィニティ」は、ヒロインの「トリニティ」という名前(お分かりの方もいらっしゃるかと思いますが、キリスト教の「三位一体」の意味ですね)と「インフィニティ」を合わせ韻をふませたものです。これに呼応するものとして、トリニティが主人公ネオと旅をする中で命を落としてしまう場面でかかる「トリニティ・デフィニトリー」があります(『マトリックス・レヴォリューションズ』)。こちらもファゴットソロとミュートつき弦楽の美しいハーモニーからなる良曲ですので、ぜひ聴いてみてください。

『マトリックス』は三部作で、『マトリックス・リローデッド』『マトリックス・レヴォリューションズ』と続いています。筆者のイチオシの曲は『レヴォリューションズ』の「ナヴラス」です(これを「今日の1曲」で取り上げなかったのは、これ一曲について特集号ができるほどの内容量だからなんです。それはまたいずれ、こちらに書こうと思います)。

【次回予告】
次回は映画『ロード・オブ・ザ・リング』より、ハワード・ショア作「ホビット庄の社会秩序」です。お楽しみに!

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